イザベル・アジェンデ 『パウラ、水泡なすもろき命』

というわけで、イザベル・アジェンデさんの『パウラ、水泡なすもろき命』読みおわり。

パウラ、水泡(みなわ)なすもろき命

パウラ、水泡(みなわ)なすもろき命

これ、イザベル・アジェンデさんの実の娘パウラさんが、
遺伝性のポルフィリン症という奇病によって昏睡状態になってしまいます。
いつか彼女が意識を取り戻したとしても、
彼女の記憶は失われてしまっているかもしれない。
そのときのためにアジェンデさんは、
彼女が眠る病院のベッドのかたわらで、
彼女を看護するために泊まっているマドリードのホテルの部屋で、
一族や家族、自分自身やパウラさんのことについてを書きはじめます。
彼女が目を覚ましたとき、自分がだれなのかわかるように。
っていう本でして、いやー、これは良い本でしたよ。


この本は、アジェンデさんがパウラさんに語りかけるスタイルで、
パウラさんに宛てた手紙のように書かれていた第1部に対して、
第2部ではふつうの小説のようなスタイルで、
もしくはふつうの伝記のようなスタイルで書かれているんですけれども、
それがまた、第1部の語りかけるようなスタイルにかわる瞬間があるんですね。
それが、もう、スタイルの変化がそのままアジェンデさんの心境の変化となる構造になっていて、ものすごくドラマチック。
ぐあーっときます。アホっぽい言いかただけど。いや、ほんとに。


きみには私の声が聞こえないのに、なぜこんな風に話しつづけるのだろう?
きみはたぶん、けっして読むことがないというのに、なぜこれらのページを書くのだろう?
それは私の人生が物語によって編まれてゆき、
私の記憶は文章によってはじめて確かなものとなるから。
言葉がこの紙のうえに生む以外のものは、時が消してしまう。