『一角獣・多角獣』 シオドア・スタージョン

そんなわけで、昨日も書いた『一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)』を、
もうちょっと詳しく紹介しようかな。おもしろすぎたからね。
とりあえず収録作品は以下。

一角獣の泉
熊人形
ビアンカの手
孤独の円盤
めぐりあい
ふわふわちゃん
反対側のセックス
死ね,名演奏家,死ね
監房ともだち
考え方

これをちょっと勝手にいくつかのカテゴリにわけて紹介してみましょうね。

  • 一角獣の泉
  • ふわふわちゃん

ふたつとも寓話的なお話で、
「一角獣の泉」は「それからというもの、犬はワンと鳴き、猫はニャーと鳴くようになりましたとさ」
「ふわふわちゃん」は「その娘をさらったのは……おまえだーーーーっ」といった感じ。

ふたつともミステリ色の強いお話。とはいっても、べつに犯人探しをしたりするわけじゃないんだけどね。
「死ね,名演奏家,死ね」は読むの2回目。
「考え方」は、ええっとねぇ、なんでこんなのが思いつくんだ?
とりあえず、変な作品としか言いようがないです。これだけでもじゅうぶん読む価値あると思うよ。

このふたつをいっしょにしちゃうのはちょっと無理があるかもだけど、
「熊人形」は知識を食べる熊のお人形さんのお話で、
ビアンカの手」は、美しすぎてそれ自体があたかも生命を宿しているかのような手のお話。
ビアンカの手」はフェティシズムの極みやね。

  • 孤独の円盤

これはまさにこの人の真骨頂。
読むの2回目だけどあいかわらず素晴らしい。とても美しく、感傷的なお話。

  • 監房ともだち

この人は、ミュータントや畸形の人たちを「人間以上 (ハヤカワ文庫 SF 317)」のものとして描くことが多いんだけど、
この作品もそういう芸風のお話。

  • めぐりあい
  • 反対側のセックス

この人の作品に欠かせないテーマに「シジジイ」という、
この人独自の理論みたいなものがあるらしくって、
このふたつは、そのシジジイ理論をあつかった作品。
シジジイっていうのは、大つかみに言うと単性生殖のことで、
過不足なく完璧に調和のとれた美しいものである一方、脆い部分も持ち合わせているものらしいです。
「反対側のセックス」を読んでから「めぐりあい」を読んだほうが、
シジジイについてより理解できると思います。
まあ、シジジイについてあんまり良くわかんなくても、「めぐりあい」はかなり素晴らしい作品なんですけれども。


というわけで、この短編集がいかにヴァラエティに富んでいて、
1冊でもうお腹いっぱいになってしまうかということを書いてみました。
ね?ちょっと読みたくなってきたでしょ?
僕個人としては、あと「〈ない〉のだった−本当だ!」とか「ミドリザルとの情事」みたいな、
アホっぽい話がひとつ入ってれば、スタージョン・ベスト盤として言うことなしだったんだけどね。
「ミドリザルとの情事」なんてオチで爆笑しましたもの。本読んで爆笑することなんて滅多にないのに。
でも、なんにせよ素晴らしい短編集でした。昨日も書いたけどほかの異色作家短編集も買うよ。